アスペルガー夫との子育てのコツ 

「8時消灯ルール」

「夜8時までに必ず息子を寝かせること」

夫が決めた我が家のルールです。

 

息子が小学校低学年になるまで、このルールが私に課されていました。

夫には、特に子育てにおいて強いこだわりがあり、これもその一つ。

 

私は、夫と同様にフルタイムでコンサルタントをしているので
5時半に幼稚園にお迎えに行き夜8時までに息子を寝かせるなんて

毎日が戦争のようでした。

 

でも私はそのルールをなんとか守ろうと努力をしていました。

 

 

息子が幼稚園時代のある金曜の夜のこと。

 

私はママ友に誘われて、子供達と一緒に近所で食事をしていました。

 

「もう8時になるのに、どこにいるんだ?すぐに帰ってこい。」

夫からのメッセージです。

 

いつも夫は、息子の就寝後、9時過ぎにしか帰宅しないのに
この日に限って早く帰宅したようでした。

 

そして息子と私が家にいないことに気づき
こんなメッセージを送ってきたんです。

 

結婚後しばらく、我が家の夫婦関係は良好でした。

夫婦喧嘩もほとんどなく、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など

まとまった休みには、夫の希望で家族旅行に行き、仲良く過ごしていた。

 

しかし、息子が年中の時に、小学校受験をさせたいと夫が言い出した頃から
彼は息子の教育や生活について強いこだわりを示すようになりました。

 

夫は、自分の価値観を外れることについては受け入れ難く
私が違う意見を言うと、鋭い言葉で批判してくるようになりました。

 

夫にはアスペルガーの傾向があると診断されたのもその頃のことです。

 

 

「夫の言葉が怖い」

息子のことに関して、夫は事あるごとに私を批判するようになりました。

 

父親が家計を支え、母親が専業主婦という家庭で育った彼にとって

私が働くことは息子を蔑ろにしているように見えていたようです。

 

「俺一人の収入でやっていけるのに、お前は自分のエゴのために働いているんだ。」

と言われたこともありました。

 

私の母も専業主婦で「幼い子供を保育園に預けるなんてかわいそう」と口にしていたこともあり

私自身もワーキングマザーでいることへの後ろめたさを感じていたんです。

 

だから夫の言葉は、私の心に深く突き刺さりました。

 

その後も、夫から子育てについて批判的な言葉を浴びせられるようになり

いい母親になるためには、夫のルールを厳守しなければと

自分を追い詰めるようになっていきました。

 

そしてとうとう私は、産業医(精神科医)からカサンドラ症候群※と診断を受けたのです。

 

※カサンドラ症候群
パートナーあるいは身近な人がアスペルガー症候群をはじめとした共感性の低い特性
がある場合に起こる心身の不調のこと。

 

その日も、幼稚園のママ友と食事をしていると返信すると

「お前の楽しみのために子供を巻き込むな。すぐに帰ってこい。」

とのメッセージが立て続けに届き、私はおそろしくなりました。

 

「お前はダメな母親だ。」

と否定されているように感じたんです。

 

その頃には、不機嫌な夫に何かを言われると

私の人格を否定されているような印象を受けるようになっていました。

 

 

「夫の言いなりになる」

初めの頃は、夫と意見が違う時は、私も自分の考えを言うようにしていました。

 

でも私が口を開くとすぐに

「お前は何もわかっていない。」

「息子の将来がどうなってもいいのか。」

「お前はそうなったら責任がとれるのか。」

と物凄い剣幕でまくしたてられ、私は黙り込むしかなくなりました。

 

そして言われた言葉を何度も思い出してしまい、その度に私は自分を責めるようになりました。

 

夫の言うように
「私は母親失格なのではないか…」

「私のせいで息子に悪影響を与えてしまっているのではないか…」

とまで思うようになっていきました。

 

さらに夫が口を開くと、また何か批判されるのではないかと怖れ

毎日、夫の顔色をうかがいながら、息をひそめて生活するようになりました。

 

 

「怖れを感じると…」

夫に何か言われるたびにびくっとしていた私でしたが

この状態をなんとかしたいと思い、感情を感じてみることにしました。

 

初めに出てきた感情は、怖れです。

 

夫に言われた言葉を思い出すと、心が震えて縮こまっていく感覚。

怯えた小さな子供が自分の中にいるようでした。

 

そして怖れに向き合っていくと、次は悲しみが出てきました。

 

本当は一番身近にいる存在である夫には、私のことを理解してほしかったし

もっと温かい言葉をかけてほしかった。

 

私なりに仕事も子育ても家事も精一杯がんばっていたのです。

 

ほめてくれなくてもいいから、せめて否定や批判だけはしてほしくなかった。

だから否定されるとものすごく寂しかったし、辛かったのです。

 

でも息子の前では、傷ついていることを見せてはいけない、

元気なお母さんでいなきゃと、自分の本心を包み隠してきました。

 

長いこと感情に蓋をしてきたため、もう感情を感じることも忘れていたのかもしれません。

 

そして最後にやっと出てきたのが怒りです。

 

なぜ私ばかりがこんな目にあうの?

私が何か悪いことをしたっていうの?

なんでそんなに私のことを傷つけることばかり言うの?

 

人に対して憤りを覚えるなんて、私が最も嫌悪していた、見たくなかった自分の姿でした。

 

でも今まで蓋をしてきたそんな感情も、私の中には存在するのだと受け入れて認めることにしました。

 

 

「夫の家庭環境」

夫の育った家庭には、高圧的な父親とその支配下にある母親という構図があったようです。

 

「私が息子たちにしてあげようとすることは、全部お父さんに否定された。」

と義母は、よくこぼしていました。

 

その話を聞き、幼い頃からそういう両親を見てきた夫にとって、それが”普通の”家庭像だったのだ
と思いました。

 

彼をアスペルガーと診断した医師は、彼の父親も恐らくアスペルガーだっただろうと言っていました。

 

「アスペルガーの人は針の穴から世の中を見ているようなもの」

と医師に言われたことがあります。

 

そうだとすると、夫にとって自分の価値観に外れる世界は受け入れ難く

ともすると怖ろしく感じるものだったかもしれません。

 

だから私がその価値観に少しでも反するようなことを言ったりすると

不安になり、私を攻撃するしか術がなかったのかもしれない、と思います。

 

 

「ありのままの感情を認める」

それからは、自分の感情に蓋をすることをやめました。

 

悲しい時は、その気持ちを見て見ぬふりをせずに、感じきることにしました。

息子が寝た後に、一人で泣くことも自分に許容できるようになりました。

 

次第に、それまで感じないようにしてきた自分の気持ちも

わかるようになっていきました。

 

私の心には、怖れも、悲しみも、悔しさも、怒りもあるんだと。

 

以前の私は、感情が波立つことは大人げない、人間的に未熟な証拠と思っていましたが
それを感じることも自分に許容できるようになっていきました。

 

また、怖れや怒り等はよくない感情と忌み嫌って、そういう感情を感じる自分を否定していましたが、

感情に良し悪しをつけず、ありのまま受け入れることが解消のコツだということもわかってきました。

 

やっとありのままの感情を認め、感じきる土台が整ってきたのです。

 

 

「自分軸で生きる」

以前は、至らない私が自分の欠点を克服すれば、いつか夫も変わってくれるかもしれない、

そして私のことを認めてくれる日が来るかもしれないと期待していました。

 

しかし、彼の共感性の低さは先天的なものであり、変わるものではないと
やっと受け入れられるようになってきました。

 

だから私の望みは叶うことはなく、ありのままの彼を受け入れるしかない
と思えるようにもなりました。

 

そう思い至ると、彼が変わらないのであれば
私にできる唯一のことは、自分で自分の感情に向き合ってクリアリングすることだと
腹を括ることもできました。

 

そうして自分の心の平穏を自分で守ろうと決められたのです。

 

自分の感情を取り扱えるようになると

自分がいかに夫の価値観(他人軸)に縛られていたのかにも気づくことができました。

 

そして解消されずにたまっていた感情をクリアリングすると

自分の本音や価値観(自分軸)にもアクセスできるようになってきたんです。

 

数年後には、カサンドラ症候群もすっかりなくなっていました。

 

今では、当時のことを笑顔でクライアントさんにお話しすることができています。

 

 

「まとめ」

もしあなたが、パートナーからの言葉に傷ついたら

その時に感じた気持ちを見つめてみて下さい。

 

なんで私がこんなひどいこと言われなきゃいけないの!! という怒りでも

一番大切にされたい人に否定された悲しみでも なんでもいいのです。

 

自分の感情をありのまま認めて感じてあげることはタダ(笑)なので

ぜひ自分の心に正直にありのまま認めてあげて下さいね。

 

こんな感情を持ってはダメ!と否定する必要もありません。

 

そうして自分の感情に向き合っていくと、もしまた同じようなことを言われても

以前よりはダメージを受けにくくなってくることでしょう。

 

自分の心を大切にして、自分らしさを取り戻していくあなたを応援しています!

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