走り続けるママたちへ 

「フル稼働中」

「優香さんのサービスを、優香さんが受けた順番で、全部受けたいです!」
ある日、あやさん(仮名)が、私の”おうちサロン”に駆け込んできました。

 

大企業で営業職をしているあやさんは、3歳の娘と夫の三人家族。

その会社では、女性営業職は、出産後はバックオフィスに異動するのが通例でした。もしも、大事なお客様訪問の日に子供が体調を崩してお迎えに行かなければならなくなるとお客様に迷惑がかかるからと、多くが営業の第一線から退いていました。

その中であやさんは、産休後も営業職として現場復帰することを選び、ワーキングマザーのロールモデルとして後輩たちからも相談を受けたりしながら、頑張ってきました。

転職したばかりの夫は毎晩帰宅も遅く、遠方に住む両親のサポートも得られず、彼女はこの2年間、ほぼワンオペで育児と仕事を回してきたのです。

 

さらに最近の組織変更で、トラブル案件を引き継ぐことになり、毎日客先に行っては苦言を呈され、真夜中まで説明資料を作り、それでも仕事が終わらない、そんな日々を送っていました。

大事な商談がある日に限って、お嬢さんも熱を出して仕事中に保育園からのお迎えの電話がかかってきたり、園長生からは具合が悪い時は、朝、病院に行ってから登園して下さいと言われ、イラっとしてしまったり、復職してから一番大変な状況に陥っていた時でした。

 

そんな折に私の「子育てにおける感情の取扱い」セッションに参加して下さり、「これだ!」と思い、感情トレーニングとカウンセリングを、即日申し込んでくれたのでした。

 

 

「感情が感じられない」

カウンセリングを始めた当初、あやさんの口からは「感情」の言葉がほとんど出てきませんでした。

「どう感じていますか?」と聞いても
「感情。。。 うーん、なんか疲れている感じかなぁ。」

 

これまでの彼女は、問題が起きてもロジカルに考えて解決してきました。育児のことも夫とのことも、仕事のタスクのように割り切って、裏に潜む感情は感じずに全て一人で片付けてきました。

端から見ると身を擦り減らすほどがんばっているのに、彼女は「まだまだです。もっとがんばらなきゃ。」と常々言っていました。

でも実際は、ハードワークに疲れ切って顔色も悪く、早口で話しながら息がとても浅くなっていました。

 

 

「夫への怖れ」

ある金曜日、彼女はママ友と子供連れで、近所のファミレスで食事をしていました。翌日はお休みなので久しぶりに仕事を早く切り上げ、気の合う友人とおしゃべりをし、束の間の息抜きをしていたのです。

 

食事を楽しんでいると、20時過ぎに携帯に夫からのメッセージが入りました。いつも深夜まで帰宅しない夫がその日に限って早く帰宅し、家に妻と娘がいないことを知り、連絡をしてきたのです。

ママ友と食事をしていることを伝えると、夫からはすごい権幕のメッセージが立て続けに入りました。

 

「こんな時間まで何やってるんだ!もう娘を寝かす時間だろ。」

「お前の楽しみのために子供を振り回すな。」

「すぐに帰ってこい!」

 

彼女は、着信音が鳴る度にびくびくしました。そして、とうとう友人に急用ができたと伝え、食事を切り上げて、そそくさと帰宅しました。

 

「夫からのメッセージで、早く帰らなきゃと焦りました。子供を早く寝かせなきゃいけないから。」
「なぜ早く寝かせなければいけないのでしょうか?」
「うーん、夫が怒るから。」

 

「旦那様のメッセージを見て、どんな感じがしましたか?」
「怖かった。あ、わたし、夫の言葉がとても怖かったんだ。。」

彼女は、自分の言葉に驚いていました。自分が夫を恐れているなんて、思いもよらなかったからです。

 

「着信音が鳴るたびに、今度は何を言われるのかとびくびくしながらスマホを確認しました。自分を否定されるようで、一つ一つの言葉が胸に突き刺さるようで怖かったんです。その怖さに耐えきれず、すぐに帰宅しました。」

 

夫はいつもは優しいのですが、時折、彼女を否定するような言葉を言ったりメッセージを送ってくるそうです。

周囲からは、仲の良い夫婦と思われているから、夫の言葉が怖いなんて、恥ずかしくて誰にも相談できませんでした。そして自分の感情を見ないで大丈夫な風を装っていたのです。

 

 

感じるトレーニング」

あやさんは、感情トレーニングコースで、自分の感情を認め、感じる訓練を始めました。

 

会社では、仕事と子育てを両立するロールモデルとして認められて、後輩ママ達の相談にものっている自分が、家では夫の言葉の攻撃に悩まされているなんて、とても受け入れ難いことでした。

 

初めの頃は、感じるトレーニングをしながらも「夫は子供には優しいし、いい父親だから」とか、「会社では当たる人がいないから家で私に当たってしまうんです」とか、いろいろな言い訳をしていました。

そうして自己完結して、夫への怖れや傷つけられる悲しみといった見たくない感情から目をそらしていました

 

しかし次第に、そのやり方では夫の言葉はエスカレートするばかりで、何も解決しないことに気づきました。

そして、わいてくる感情をそのまま認め、それを感じるようになってきました。

 

 

「向き合う決意」

あやさんは、これまで感情を全く見てこなかったことに気づきました。

仕事が忙しくても子育てが大変でも、有能な彼女は、やるべきことを列挙しては仕事のタスクのようにこなし、走り続けてきました。

感情を感じると、夫を恐れていることや、子育てへの不安を直視しなければならなくなるので、目を背けて見ないふりをしてきました。

 

カウンセリングで「夫が怖い」という言葉が口をついて出た時、あやさんは、自分の言葉に驚愕していました。
仕事もできて子供をかわいがってくれる夫の言葉に自分が傷ついているなんて、思いもよらなかったのです。

理想的な夫婦と思われている自分が夫の言葉を、夫を怖れているなんて「口が裂けても人に言えません」と彼女は語っていました。

 

でも次第に、感じない感情は溜まっていくばかりで、夫との関係は変わらないことに気づきました。

そこで人に言う必要はないから、とにかく感情を感じることに取り組もうと心に決めたのです。

 

 

「怖かったメールが」

当初は、感情に向き合うことに抵抗していたあやさんでしたが、“おうちサロン”にいらした時の強いコミットメントに、根っからの真面目な性格が相まって、日々感情を感じる練習を積み重ねていきました。

 

まず夫からメッセージが届いたら、中身を見る前に自分の感情を感じてもらいました。

「今度はどんな批判をされるんだろう?」「また否定されたら辛い」「一番信頼すべき夫からこんな仕打ちをうけるなんて悲しい」 いろいろな感情がわいてきました。

そんなザワザワした気持ちを感じ尽くしてから、メッセージの中身を見るようにしてもらいました。

 

次第にどんなメッセージも以前ほど恐ろしくはなくなりました。

以前なら人格否定のように感じたであろう言葉もフラットに読めるようになってきました。

 

 

「夫が変わった」

あやさんは、日々の積み重ねにより、夫からメッセージを受け取っても以前のように感情が波立つことも減り、冷静に返事を書けるようになりました。

 

もう一つ「感情をしっかり感じきるまでは、返事を書き始めないで下さい」とも伝えました。

感情を感じないまま書いた文章は、後で推敲しても、もともとの怖れや悲しみなどのエネルギーが乗ったままになってしまうからです。

 

彼女はそれも忠実に実践してくれました。すると「夫の言葉が変わりました」との報告がありました。

 

以前のあやさんは、夫の言葉に傷ついたまま、自分が至らなかったことを謝罪する返事を書くことが大半でした。

すると、夫からは批判的なメッセージが続けざまに届き、内容もエスカレートしていきました。

 

しかし感情を感じきってから返事を書くと、夫の否定的なメールはそこで止まるようになってきました。

 

最大の進歩は「返信しない」選択もできるようになったことです。

以前は、怒った夫のメッセージ(彼女はそう感じていました)には、間髪入れずに返信していましたが、最近は、自分が書きたい時だけ返信すればよい、と思えるようになりました。

それにより、攻撃的なメッセージも、それに応戦する回数も減りました。

 

 

「人生を変えるのはあなた」

あやさんは、仕事も子育ても立派にこなすワーキングマザーとしての自己イメージを守るため、この何年も夫への怖れや夫に認めてもらえない寂しさを見ずに過ごしてきました。

しかし感情トレーニングやカウンセリングを通じて、自分の感情に向き合い解消する術を知り、それを実践することができるようになりました。

感情を感じ尽くしてから行動すると、夫の憤りの火に油を注ぐことも減り、夫の反応も変わってきました。

夫からの攻撃的な言葉がエスカレートすることもなくなりました。

 

自分の感情を感じると、こんなにも生きやすくなるんですね」と、あやさんは言います。

 

私はよくクライアントさんに「人は変えられない。あなたの人生を変えられるのはあなただけです。」とお伝えしています。

どんなにがんばっても、旦那様もお子さんも、会社の嫌な上司(笑)も、変えることはできません。

 

でも「自分の感情を認めて感じる」だけで、周囲の状況が変わってくることはあります。

 

夫婦関係がよくなった、思春期のお子さんと仲良くなれた、仕事が楽になった、嫌な上司が転職した等々、いろいろな実体験をクライアントさんから聞きます。

 

「自分の感情を認めて感じる」だけ、こんなお手軽なツールをあなたも手に入れてみませんか。

※この記事は、クライアントさんの了承を得て書いています。

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