夫婦関係をよくしたいママたちへ 


「出ていけと言われた日」

「夫から『お前は母親失格だ。出ていけ。』と言われました。でも誰にも相談できなくて…」

あきさん(仮名)は、夫と小6の息子の三人家族。

結婚して専業主婦になり、あきさんは、この15年間、いつも家族が心地よく暮らせるようにと家事や育児を精一杯やってきました。

最近は、体調を崩してしまい、体がつらい日もありますが、夫や息子に迷惑をかけないように、自分のことは二の次で家のことを最優先にしています。
例えば、息子の塾の送り迎えも、途中で自分の体調が悪くなるといけないので、早めに出かけて現地で待っているようにしているといいます。
そんなあきさんですが、先日、息子と言い争いをした時に思わず「あなたなんて生まなければよかった」と口走ってしまったそうです。
反抗期が始まった息子との口喧嘩の延長で、売り言葉に買い言葉で口にしてしまったもので、ご本人としても思いがけない言葉だったといいます。
その後、そんな言葉を口にしてしまった自分は母親失格だと、自分のことを責め続けていました。
最近、夫にそのことを知られてしまい「出ていけ」と言われたというのです。
あきさんは、これまで常に夫と息子のことを最優先にしてきたのに、自分が守ってきた理想の温かい家庭がガラガラと崩れ落ちたような気がしていました。
その日も、家族で買い物に出かける予定でしたが、「お前はついてくるな」と夫が息子を連れて二人で出かけていってしまったそうです。

「自分を立て直す術」

あきさんは、その日、夫に拒絶されて、家族でのお出かけにも連れていってもらえず、とてもショックを受けていました。
でも、専業主婦が自分の役目だからと自分に言い聞かせて、気持ちを奮い立たせていました。
「ちょうど二人が出かけたので、今日は家中を掃除しておこうと思います。」
と無理やり自分を鼓舞しようとしていました。
そこで、まずはご自身の感じている感情に向き合ってもらうことにしました。
「感情を感じる?なんて思ってもみませんでした。
夫になんと言われようと、母にも心配かけたくないので相談できないし、自分でなんとかしなきゃと思って、一人でずっと抱えてきました。」
ポツリポツリと彼女は話し始めました。
「今日は、家族で買い物に行く予定で、私も出かけるしたくをしていたんですが、夫から『ついてくるな』と言われて。
数日前、私が口にした軽率な言葉が原因で、夫から『出ていけ』と言われたこともずっと後を引いていました。
私は母親失格です。
また夫に怒鳴られるのが怖くて、二人が出かけていくのを玄関で見送るしかありませんでした。」
話しながら、少しずつあきさんの感情が出てきました。
「二人を玄関で見送って、ドアがバタンと閉まって、そのシーンがその後何度も思い出されるんです。
私だけが取り残された感じで、とても寂しかったんです。
でもその気持ちを感じたくなくて、専業主婦の私は、二人が留守の間に家のことをやっていればいいんだと自分を奮い立たせていました。でも、気持ちは重いままでした。」

「幼い頃からの思い癖」

夫に「出ていけ」と言われた上に、家族でのお出かけにも連れて行ってもらえなかったあきさん。
なぜそんなにも自分を追い詰めてしまったのでしょうか。
「私は昔から、『つらい』とか『寂しい』とか、口に出すことのできない子供でした。」
あきさんには体の弱い妹がいて、幼い頃、両親はその妹にかかりっきりだったそうです。
両親からも「あきちゃんは、お姉ちゃんだからしっかりしてね。」とずっと言われ続けてきました。
だから自分でも、両親に迷惑をかけないように、いつもしっかりしていていなければ、と常に思っていたそうです。
両親が病院の妹に付き添っている間も、本当はとても寂しくても、心配をかけたくなくて「寂しい」と口にしたことがありませんでした。
両親の期待にそうようにずっと手のかからない、いい子を演じてきました。
「父や母が家にいない時は、祖父母が私の面倒を見てくれましたが、本当は私もお母さんと一緒にいたかったんです。
でも両親に心配をかけてはいけないから、ずっと我慢してきました。」

「感情に向き合う」

「旦那様に『出ていけ』と言われてどう感じましたか?」

「私は専業主婦なので、出ていけと言われても行く所がありません。田舎の母に心配をかけたくないので、夫とのことを相談することもできませんでした。」

なかなか感情に辿り着きません。
「今朝、旦那様と息子さんを見送った時に、どんな気持ちがわきましたか?」
「とてもショックで寂しかったです。あまりに辛くて、その気持ちを見たくなくて、主婦の私には家事があるからと心を立て直そうとしました。でも本当は辛くて仕方ありません。
一緒に出掛けたかったのに夫に拒絶された時、母親失格だから家族ではないと言われたような気がして、本当はとても寂しかったです。」
だんだん感情に向き合えるようになってきました。
「今一番怖いのは、夫と息子が帰ってきて、玄関のチャイムが鳴り、インターホンに二人の姿が映るのを見ることです。
夫と顔を合わせると、また否定されそうで怖くてしかたありません。」
あきさんには、二人が帰宅する前にその感情をしっかり感じてもらいました。
すると、二人が帰宅した時、動揺せずに自然に「おかえり」と言えたそうです。

「いい子の仮面」

 

あきさんは、幼い頃からずっと、妹のことで忙しい両親に心配をかけてはいけない、姉である自分はしっかりした、いい子でいなければいけないと思ってきました。

そして弱音も吐いてはいけないと、自分の寂しさをずっと我慢して押し殺してきました。

なので、夫から「出ていけ」と言われた時も、一緒に外出することを拒まれた時も、寂しいとかつらいと言ってはいけないと思って我慢したのです。
その感情を感じないことで、自分を保とうとしました。
でも、頭でいくら自分は専業主婦だから、家を綺麗に整え、食事を作り、夫と息子の帰りを待っていればよいと言い聞かせても、心はついてきませんでした。
本当は置いて行かれて寂しい、自分を否定されたようで辛い、そんな気持ちでいっぱいで、二人が出かけた時のシーンが何度も何度も思い出されました。

「ダメな母親という思い込み」

あきさんは、自分の寂しさを感じ始めると、自分自身を否定していたことに気づきました。
最近、体調を崩すこともあり、そのせいで夫や息子に迷惑をかけてしまっているのではないか、健康でない自分はダメな母親なのではないかと、自分自身を否定していました。
でも感情を感じることで、その自己否定感が少しずつ緩んできました。
「もし”あきさん”があなたの大切な親友だとしたら、今の”あきさん”にどんな声をかけてあげますか?」
「いつも子育ても家事もがんばっているね。体調が悪い時は、辛いと言っていいし、周りの人を頼ってもいいんだよ、と声をかけてあげたいです。」
あきさんの表情がゆるみました。
一人でがんばりすぎずに、辛い、寂しいと言ってもいいんですね。なんかじんわり心が温かくなってきました。」

「私も行きたい!」

いつも夫の言う通りにして、自分の意見は言わずに縮こまって我慢していたあきさんでしたが、その後「今日はママも一緒にお出かけするね」と言えるようになりました。
いつもおとなしいあきさんが意思表示をしてくることに対して、初めは戸惑っていた夫も、次第にあきさんを許容してくれるようになったそうです。
「夫には、ずっと『お前は何もできない、ダメな母親だ』と言われてきましたが、最近、夫が私を否定する言葉が心なしか減ってきた気がするんです。」

「夫婦関係はあなたの心を映し出す鏡」

 

「子育ての悩みを聞いて下さい」とカウンセリングにいらっしゃた方の中にも、お話を伺ってみると、旦那様との関係性に一番悩んでいるというケースが少なくありません。

そして、その原因を探っていくと、ご自身のインナーチャイルド(幼少期から思春期までについた心の傷や満たされなかった想い)にたどり着くことがあります。

 

旦那様に言われた言葉に傷づいてしまう、よく言い争いになるなど、夫婦関係にわだかまりを感じることがあったら、その時にわいてくる感情を感じると共に、過去に似たような感情をもったことがなかったか、立ち止まってみることもいいかもしれません。

 

そこでもしもご自身の過去の寂しさや辛さが出てきたら、ぜひそれも一緒に感じてみてあげて下さい。

そうすることで、たまってきた過去の感情が少しずつ解消されていきますので。

それを続けていくと、目の前の出来事に対するあなたのとらえ方が変わり、現実が動き出すこともあるかもしれません。

 

旦那様との関係にモヤモヤを感じたら「感情を感じる」、ぜひやってみて下さいね。

 

※この記事は、クライアントさんの了承を得て書いています。

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